LOST CHILDREN

by le mot

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about

 バーテンダーのOと出会ったのは今から六年前だ。
 その頃のOはまだバーテンダーではなくて詩人志望のただの飲んだくれだった。おれたちは神田神保町の同じレストランでアルバイトしていたんだ。
 Oは詩を書きためていて、出版社の賞に送るために詩を選定してほしいとおれに依頼した。
「ここから選んでほしい。どんな順番にしてもいいし、減らしても増やしてもいいよ。」と言われた。
「増やしても?」おれは聞き返した。
編集で数を減らすことは考えられるけど、増やすってどういうことなんだ?おれに新作を書けと言っているのか?
 自分の作品なのにまるで興味ないような物言いはOの人柄を端的に言い表している。今思い返せばあのときにおれは詩を「増やした」方がよかったのかもしれない。そしたらOは賞に入選して詩人になっていたかもしれない。Oが出版社に送った詩集は「Lost Children's Song」というものだった。
 奴は詩を書くのとレストランで働いているふりをしている以外の時間は几帳面に毎晩飲んでいた。毎晩、来る日も来る日も呑んでいた。それは端からみるとまるで仕事のようだった。柳橋あたりで呑んでいると次から次に友人と名乗る人々がやってきてたちまち大所帯の飲んだくれ集団になってしまう。酒癖の悪い花火屋、キャバ嬢崩れ、ロリ声の保険売り、みるからに上役風なスーツの紳士もいれば、みるからにヤクザ風を吹かすのスーツの輩もいた。
 Oが実はバンドをやっていると知ったのはそれから少し経ってからだった。Oは「バンドをやっているんだけど、無茶苦茶でクソみたいなバンドなんだ。ライブの時は酒呑んで演奏しないでモニターだけひっくり返したこともあったし」とか言っていた。
Oの物言いに慣れてきたおれはその言葉を特に信用していなかった。多分、本当にモニターひっくり返したりはしていたんだろうけど。Oのバンドle motのスタジオリハーサルに遊びに行って初めて音楽を聴いたとき、驚いた。「曲、良いと思うよ」と言う前におれはエレキギターとピアノを借りてバンドのアンサンブルに参加した。
 Oの相棒はBoSuという強面でひどく無口なドラマーだ。酒は一滴も飲まないで淡々とドラムを叩いた。Oが酒を呑んでモニタースピーカーを投げていたときBoSuはどうしていたのだろう?
 何度もレコーディングのアイデアが出たが、おれとOが呑んだくれて、様々なビジネスやトラブルに首を突っ込んでいるうちに機会をのがしてしまった。そのうちOはバー「夜更けの人々」を立ち上げて、おれも他のバンドでCDを出したりツアーに出るようになってle motで活動できる時間は減り、さらに月日は流れた。

 今回満を持してようやくレコーディングできた夜鷹、Robot、海賊船、love can、三曲目、ふざけたやつ、はOとBoSuが10年以上に渡るバンド活動で磨きあげた六曲だ。
 ダークさとチャーミングさが共存したシンプルな楽曲は彼らの人柄を端的に反映していると思う。シンプルさだ。現代のロックミュージックに喪われた要素だよな。シンプルを好むBoSuは下町の職人なんだ。ちなみにベーシストは薬売りさ。職人と薬売りと大酒飲みのバーテンダーが作った音楽。つまり江戸気質さ。おれみたいなよそ者から観ると彼らはまるで江戸時代の感覚と変わらずに2015年を生きているように見える。多分「江戸気質」という言葉を彼らはは気に入らないだろうけど。
 そして今回、おれは楽曲を「増やした」。二曲のインタールードとRISEという曲だ。RISEはもともとはzampanoにOが書き下ろした詩におれが曲を作ったものだ。だから今回の演奏はカバーでもあるし、オリジナルでもある。
詩の朗読と即興演奏はもちろん酩酊状態で録音した。セブンクラウンをずっとストレートで煽りながら録ったんだ。酩酊がいいわけじゃない。シャイだから飲まないとできなかったんだろう。この演奏はどれもただの雰囲気だよ。雰囲気こそが一番大事な気がするけどな。
 そうして出来上がったこのアルバムは「LOST CHILDREN」というタイトルになった。
 最初出会った頃のあの詩集との関係はよくわからない。おれたちは多くの伏線を張りながら生きているが、現実は物語じゃないからこの伏線はおれたちが回収しない限りはどんな展開にも繋がらず、忘れ去られていくだけだ。

 le motの音楽がこれからどうなっていくのか、おれには見当もつかない。だが、毎晩酒場で声を使っていると、歌声はこうも変わるのかと楽しんでいる。
 多分このアルバムは夜更けの人々のカウンターに座っても聴くことは出来ないだろう。押し付けが嫌いな人々なんだ。だから君は一人でこの音楽を聴くしなかない。それでもいいだろ?そういう音楽を作ったんだ。

credits

released October 12, 2015

music by le mot
lyric by O

O : vocal, guitar
BoSu : drums
森元裕太 : bass
NG : guitars, piano, harpsichord

guest : 川合啓介 alt sax on tr1,3,4,8&9

produced by NG&O
recorded by 新田
mixed & mastered by NG

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